逆転カップル~可愛い彼氏とイケメン彼女~
「樹さん」
しばらくして穂村真尋はやってきた。
彼女は中に入るとあたしの元に近づいて止まった。
「足、さっき…大丈夫だった?」
「あー、ちょっと捻っただけ」
「ちょっとには見えませんでしたけど」
やっぱり分かるものなのか。
あまり心配かけたくなくて、誤魔化すように笑った。
沈黙状態だった。
しかし、暫くして真尋がこちらをまっすぐ見つめた。
彼女の顔は真剣そのものだった。
窓から射し込む夕陽が彼女の顔を赤く照らす。
いや、これは夕陽のせいではない。
真尋はゆっくりと口を開いた。
「驚かないで聞いてください。
樹さんが好きです。
僕でよかったら、付き合ってください」
相手が赤面しながら言うのを見て、またか、と思った。
それと同時に彼女もか、と思った。
あたしはいつものフレーズを口にした。
「ごめん、悪いけど、あたし女なんだ」
穂村真尋はきょとんとしてあたしを見つめていた。
「だから、真尋とは付き合えない」
こういうとみんな驚くか、
それでもいいと百合宣言をするか、
そのどちらかだ。
真尋はどっちなんだろう?
本当に今まであたしが男だと思っていたのだろうか?
それとも知っていてなのか?
正直、言い慣れた言葉のはずなのに今日はどうしてか辛かった。
あたしは百合ではないから女の子とは付き合えない
だから今まで断ってきたのに
言っていることと気持ちが矛盾している気がした。
こんなのは初めてで、今にも逃げ出したくなった。
だけど
「…ふふっ」
真尋はしばらくあたしを見つめると、途端に笑い出した。
返ってきたのは予想外の答えだった。
こう訊いてきた。
「樹さん、本当に気付いてなかったんだね」