蒼いパフュームの雑音
ホテルを出てタクシーに乗り、大阪の心斎橋に向かう。
時間は間もなく11時を迎えようとしているが、賑やかさは東京と変わらず、いや、それ以上に沢山の人が行き来していた。
柊に指定された店は、よくあるタイプの居酒屋だ。
店員に案内され席に向かう。
「お疲れ様。」
柊はもうビールを呑んで、テーブルには何品か料理が運ばれていた。
「ビールでいい?」
「うん。」
柊の笑顔を見ると落ち着く。
やっぱり、居心地が良い。
カチコチに凍ったジョッキで乾杯をして、私は飲み干す勢いで飲んだ。
「ど、どうした?なんかあった?」
さすが、勘が鋭い。
「何かもう、色々あり過ぎて疲れた!」
私は、息つく暇もなく、今日あった事を柊に話した。
緋色に会ったこと以外は。
「あはは。ライブ寝るってありえないだろ?」
「本当だよ。楽しみにしてたのに。」
「しかしさ、相変わらずいい奴過ぎるんだよ、紅は。その、詩織って子もどん
な子かわからないんだろ?」
「そうだけどさ。知らない土地でバック盗まれる程、不安な事ないでしょ。」
「まあな。じゃあさ、色々あったついでにさ、もう一ついい?」
いたずらっ子の様な顔で私を見つめ、柊はポケットから小さな箱を出した。
「ん?」
「紅、俺達ちゃんと付き合おう。他の女とは切るから。」
口に含んだビールを吹き出しそうになった。
「え…え?本気で?え?は?どうしたの?まじ?」
「うん。まじ。大真面目に。」
目の前に大きな隕石が降って来たかのように、チカチカした。
離れようと思っていた私に、ちゃんと付き合おうなんて言ってるこの子犬に一体何が起きたとゆうのだ。
「で、これあげる。開けてみて。」
小さな箱を私に差し出すと、黒目がちな瞳で私を見つめた。
戸惑いながら開けると、炎のモチーフが付いた小さなネックレスだった。
「紅が離れそうになってるのが何か辛くてさ。俺なりに考えたんだ。紅を離したく無いって。沢山心配掛けて、沢山俺を大事に思ってくれてありがとう。って感じ。」
「……………いいの?」
柊から何かをもらうのは初めてだ。
誕生日もクリスマスもプレゼントするのは私からだった。
「付けてあげる。」
そう言って私の首にネックレスを掛けてくれると、何故か涙が溢れて来てしまった。
「え?いや、そんな泣くなよ!ごめん、悪いこと言った?このネックレス気に入らない?」
「違う…何かごめん。…嬉しいよ。」
柊の前で泣いたことなんて無かった。
いつだって強くいなくちゃいけないって思ってたから。
慌てておしぼりを差し出す柊に、ありがとうと言い、ジョッキのビールを飲み干した。
「あと、もう一つついでに。」
「?」
「来年、再デビューが決まった。ずいぶんと年寄りになったけどね。」
「え!うそっ!凄い!」
「だから、もっと俺を支えてね。」
私は、とびきりの意地悪な顔をして微笑み、空のジョッキをテーブルに置いた。
と同時に、柊の携帯が鳴った。
画面には『瞳』と出ていた。
「ちゃんと、ケジメ付けるから。約束する。」
柊は電話を出ながら席を立った。
二杯目のビールが半分程減った頃、柊はテーブルに戻ってきた。
「ごめん、紅。あいつ、こっちに居るみたいでさ。会ってちゃんと話してくるよ。」
私は静かに頷いた。
「とりあえずまた連絡する。明日のライブで紅の事、ちゃんとみんなに言うから。俺の事、信用してな!」
お店を出て軽く手を振り、私はタクシーに乗った。
あんなに悩んでたのに。
あんなにイライラしていたのに。
柊も私の事を考えていたなんて、思ってもいなかった。
柊と決別しようと思っていたのに、突然の告白によろめき、素直に受け入れた私が一番ズルイのかもしれない。
時間は間もなく11時を迎えようとしているが、賑やかさは東京と変わらず、いや、それ以上に沢山の人が行き来していた。
柊に指定された店は、よくあるタイプの居酒屋だ。
店員に案内され席に向かう。
「お疲れ様。」
柊はもうビールを呑んで、テーブルには何品か料理が運ばれていた。
「ビールでいい?」
「うん。」
柊の笑顔を見ると落ち着く。
やっぱり、居心地が良い。
カチコチに凍ったジョッキで乾杯をして、私は飲み干す勢いで飲んだ。
「ど、どうした?なんかあった?」
さすが、勘が鋭い。
「何かもう、色々あり過ぎて疲れた!」
私は、息つく暇もなく、今日あった事を柊に話した。
緋色に会ったこと以外は。
「あはは。ライブ寝るってありえないだろ?」
「本当だよ。楽しみにしてたのに。」
「しかしさ、相変わらずいい奴過ぎるんだよ、紅は。その、詩織って子もどん
な子かわからないんだろ?」
「そうだけどさ。知らない土地でバック盗まれる程、不安な事ないでしょ。」
「まあな。じゃあさ、色々あったついでにさ、もう一ついい?」
いたずらっ子の様な顔で私を見つめ、柊はポケットから小さな箱を出した。
「ん?」
「紅、俺達ちゃんと付き合おう。他の女とは切るから。」
口に含んだビールを吹き出しそうになった。
「え…え?本気で?え?は?どうしたの?まじ?」
「うん。まじ。大真面目に。」
目の前に大きな隕石が降って来たかのように、チカチカした。
離れようと思っていた私に、ちゃんと付き合おうなんて言ってるこの子犬に一体何が起きたとゆうのだ。
「で、これあげる。開けてみて。」
小さな箱を私に差し出すと、黒目がちな瞳で私を見つめた。
戸惑いながら開けると、炎のモチーフが付いた小さなネックレスだった。
「紅が離れそうになってるのが何か辛くてさ。俺なりに考えたんだ。紅を離したく無いって。沢山心配掛けて、沢山俺を大事に思ってくれてありがとう。って感じ。」
「……………いいの?」
柊から何かをもらうのは初めてだ。
誕生日もクリスマスもプレゼントするのは私からだった。
「付けてあげる。」
そう言って私の首にネックレスを掛けてくれると、何故か涙が溢れて来てしまった。
「え?いや、そんな泣くなよ!ごめん、悪いこと言った?このネックレス気に入らない?」
「違う…何かごめん。…嬉しいよ。」
柊の前で泣いたことなんて無かった。
いつだって強くいなくちゃいけないって思ってたから。
慌てておしぼりを差し出す柊に、ありがとうと言い、ジョッキのビールを飲み干した。
「あと、もう一つついでに。」
「?」
「来年、再デビューが決まった。ずいぶんと年寄りになったけどね。」
「え!うそっ!凄い!」
「だから、もっと俺を支えてね。」
私は、とびきりの意地悪な顔をして微笑み、空のジョッキをテーブルに置いた。
と同時に、柊の携帯が鳴った。
画面には『瞳』と出ていた。
「ちゃんと、ケジメ付けるから。約束する。」
柊は電話を出ながら席を立った。
二杯目のビールが半分程減った頃、柊はテーブルに戻ってきた。
「ごめん、紅。あいつ、こっちに居るみたいでさ。会ってちゃんと話してくるよ。」
私は静かに頷いた。
「とりあえずまた連絡する。明日のライブで紅の事、ちゃんとみんなに言うから。俺の事、信用してな!」
お店を出て軽く手を振り、私はタクシーに乗った。
あんなに悩んでたのに。
あんなにイライラしていたのに。
柊も私の事を考えていたなんて、思ってもいなかった。
柊と決別しようと思っていたのに、突然の告白によろめき、素直に受け入れた私が一番ズルイのかもしれない。