蒼いパフュームの雑音
まるでホテルのロビーのようなカラオケ屋の一室。
広い部屋のテーブルにはシャンパンやオードブル、フルーツが既に並んでいて、緋色と克哉と、見た事がある男の人が二人、座っていた。

「おー!いらっしゃい!僕達だけじゃ、と思って、この間映画で一緒だった俳優の雄太くんと石田辰雄くん。知ってる?」

一緒に行った女の子達は一気に目がハートになり、声のトーンが高くなった。

私は一番ドア側の席に座った。


みんな盛り上がる中、何故かいまいち乗り切らない私を察したのか、若手俳優の雄太が隣に座った。

「つまらないですか?」
「あー、ううん。ちょっと疲れてるのかなー?」
「あの、間違えてたらすみません。紅さんてClumsy kiss(クラムジーキス)のモデルさんやられてませんか?」
「え?ああ、モデル。うん、モデルなのかな。」
「やっぱり!俺、あのショップ好きで通ってるんですよ!」


雄太は嬉しそうに、クラムジーキスのセレクトされた服の話を続けた。

「あ、すいません。俺ってばひとりで喋って。」
「ううん、いいの。続けて?」
「てゆうか、紅さんはなんで緋色さんと知り合いなんですか?」

突然の質問に戸惑っていると、
「それは秘密だよなー?」
と、私に抱きつきながら緋色は言った。

いつもに増して、軽い緋色。

ますます分からなくなってきた。

緋色は私の頭をクシャっと掴んで、ドアの外へ出て行った。

それをみた女の子が緋色を追って外へ出て行った。

「いいのー?ほっといて。緋色、食べられちゃうかもよー?」

向かいの席から克哉が意地悪な顔をして言った。

「食べちゃう、の間違えじゃないんですか?」
「あははは!そっか!いえてる!緋色さ、最近紅ちゃんの話よくするんだよ。」
「そう、なんですか…」

もちろん、気にならないワケはない。
でもやっぱり格好つけてしまう自分がいる。

大丈夫。気にしない。大人の女だから。
って。

その時、
「紅さーーーん!歌ってくださーい!」
勝手に入れられた歌は、みんなで良くカラオケに行く時歌う曲だった。

「う…いいよ、今日は……。」
「大丈夫ですー!わたし紅さんの声聞きたーい!」
「克哉さん、紅さんめっちゃ歌上手いんですよー!」
「そうそう!克哉さん、プロデュースしちゃってくださいよー!」

場のノリ…そんなのがあって壊したくない私はマイクを受け取り、テーブルの上にあったグラスのシャンパンを一気に飲み干し歌った。



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