蒼いパフュームの雑音
(キニシナイ、キニシナイ)
「…でさ、クリスマスはライブなんだけど、紅の予定は?」
「………え?んと、ごめん、なに?」
「どうした?何かあった?」
「え、あー、ううん。何でもない。」
その時だった。
柊が振り返り私と目が合った。
「おー!紅じゃん。元気?つか、緋色さんじゃないっすかー?」
馴れ馴れしい態度で近づき、私の隣の席に座り、周りに聞こえるようにわざと大きな声で言った。
「オマエ、また男変えたのかよー。本当にとっかえひっかえ忙しい女だな。」
「な、何言ってるの?」
「緋色さん、この女気を付けた方が良いっすよ。男変えすぎで病気持ってるかもしれないっすから。あはは。」
私が怒鳴ろうとした時、緋色がテーブルの上の右手を掴んだ。
「柊くん、だっけ?遊ぶのもいいけど、女性に対してはもっと紳士で居ないと、後で痛い目に会うのは自分だよ。少なくとも、紅はそんな女性ではないからね。」
仲良かった柊の口から、あんな言葉が出てくると思わなかった。
なんだか悲しい。
裏切られたのは私のはずなのに、こんな仕打ち。
ひどい。
「あはははっ。紅、またいつでも部屋に来いよ。相手してやるから。」
吐き捨てるように言うと、カウンターへ戻って行った。
ナポリタンのウィンナーが涙で霞む。
泣かないようにしても、小さな音を立ててパタパタと涙がお皿に落ちていった。
「違う店行こっか。」
緋色は私の頭をそっと撫でて、入口のドアで強志さんと話をしていた。
私はカウンターの柊達を横目にして、逃げるようにドアへ向かった。
ガムランボールが奏でると、柊が振り返り何か言っていたが、その声はもう私の耳には入って来なかった。
悪いことしてないのに。
コソコソする自分が情けなくってカッコ悪くて嫌だ。
そして、1度は好きだった柊からの酷すぎる言葉にかなりのダメージを受けた。
後ろから追いかけてきた緋色が、そっと肩を抱いてくれた。
「大阪の泣いてた理由と一緒?」
緋色と歩く、川沿いの道。
眼差しは道の先に向けたまま言った。
私は黙って頷いた。
「悔しいよな。こんなにいい女に向かってあんな言い方してさ。わかってないなー。どうする?いっそのこと殴りに戻る?」
私は緋色の横顔を見て首を横に振った。
「な、何事も穏便に済ませた…い…」
最近は泣いてばかりだ。
とゆうか、緋色と会ってから感情が溢れる。
緋色が優し過ぎるから、私の気持ちも甘えているんだ。
止まらない涙が視界を霞ませて、久しぶりに嗚咽が止まらなくなった。
「さあ、どうする?もう全て忘れて僕の中に飛び込むか?それとも、また今までの生活に戻るか?」
私の前に腕を広げて、緋色はおどけてみせた。
空には針金みたいな細い月が白く輝いていた。
私は緋色の胸に飛び込んだ。
「騙すならとことん騙して。愛してくれるなら、とことん愛して。」
私の言葉に返事をするかのように、緋色はきつく抱きしめてくれた。
「やっと素直に落ちてくれた…ね。」
細い月のそばに、寄り添うように金星があるのを、緋色の肩越しにみつけた。
「…でさ、クリスマスはライブなんだけど、紅の予定は?」
「………え?んと、ごめん、なに?」
「どうした?何かあった?」
「え、あー、ううん。何でもない。」
その時だった。
柊が振り返り私と目が合った。
「おー!紅じゃん。元気?つか、緋色さんじゃないっすかー?」
馴れ馴れしい態度で近づき、私の隣の席に座り、周りに聞こえるようにわざと大きな声で言った。
「オマエ、また男変えたのかよー。本当にとっかえひっかえ忙しい女だな。」
「な、何言ってるの?」
「緋色さん、この女気を付けた方が良いっすよ。男変えすぎで病気持ってるかもしれないっすから。あはは。」
私が怒鳴ろうとした時、緋色がテーブルの上の右手を掴んだ。
「柊くん、だっけ?遊ぶのもいいけど、女性に対してはもっと紳士で居ないと、後で痛い目に会うのは自分だよ。少なくとも、紅はそんな女性ではないからね。」
仲良かった柊の口から、あんな言葉が出てくると思わなかった。
なんだか悲しい。
裏切られたのは私のはずなのに、こんな仕打ち。
ひどい。
「あはははっ。紅、またいつでも部屋に来いよ。相手してやるから。」
吐き捨てるように言うと、カウンターへ戻って行った。
ナポリタンのウィンナーが涙で霞む。
泣かないようにしても、小さな音を立ててパタパタと涙がお皿に落ちていった。
「違う店行こっか。」
緋色は私の頭をそっと撫でて、入口のドアで強志さんと話をしていた。
私はカウンターの柊達を横目にして、逃げるようにドアへ向かった。
ガムランボールが奏でると、柊が振り返り何か言っていたが、その声はもう私の耳には入って来なかった。
悪いことしてないのに。
コソコソする自分が情けなくってカッコ悪くて嫌だ。
そして、1度は好きだった柊からの酷すぎる言葉にかなりのダメージを受けた。
後ろから追いかけてきた緋色が、そっと肩を抱いてくれた。
「大阪の泣いてた理由と一緒?」
緋色と歩く、川沿いの道。
眼差しは道の先に向けたまま言った。
私は黙って頷いた。
「悔しいよな。こんなにいい女に向かってあんな言い方してさ。わかってないなー。どうする?いっそのこと殴りに戻る?」
私は緋色の横顔を見て首を横に振った。
「な、何事も穏便に済ませた…い…」
最近は泣いてばかりだ。
とゆうか、緋色と会ってから感情が溢れる。
緋色が優し過ぎるから、私の気持ちも甘えているんだ。
止まらない涙が視界を霞ませて、久しぶりに嗚咽が止まらなくなった。
「さあ、どうする?もう全て忘れて僕の中に飛び込むか?それとも、また今までの生活に戻るか?」
私の前に腕を広げて、緋色はおどけてみせた。
空には針金みたいな細い月が白く輝いていた。
私は緋色の胸に飛び込んだ。
「騙すならとことん騙して。愛してくれるなら、とことん愛して。」
私の言葉に返事をするかのように、緋色はきつく抱きしめてくれた。
「やっと素直に落ちてくれた…ね。」
細い月のそばに、寄り添うように金星があるのを、緋色の肩越しにみつけた。