美しいだけの恋じゃない
「あの、ただ、私が自ら飲めないアルコールを頼んだ訳ではなくて、何かの手違いで口にしてしまったのだということを、分かっていただきたくて…」

「もう良いわよ!」


その言い訳がダメ押しとなったようで、師岡さんはプイッと顔を逸らすと、踵を返し、自分のロッカーへと戻って行った。


「あーあ。朝から気分悪い!今度幹事が回って来ても絶対に断らなくちゃ!誰かさんみたいに、ちょっとしたミスで文句を言うような人が出て来るから!」


室内に居る人達の注目を集めている事など全く意に介していないようで、ガタンバタンと派手な音を立てながら荷物の整理をし、ロッカーの扉を閉めて施錠すると、師岡さんは荒々しい足取りで出入口へと向かった。


「お~こわ…」


オロオロしながら、乱暴にドアを閉めて部屋を出て行く師岡さんの後ろ姿を見送っていた私の傍に、いつの間にやら入室していた、同じく営業一課の先輩二人が苦笑いしながら近寄って来た。


「あ…。おはようございます」


私は慌ててそのお二人…田中さんと佐藤さんに挨拶を繰り出した。


「おはよう」

「おはよー。朝から災難だったねぇ」

「い、いえ。そんな事は…」


そこでハッと気が付く。


「あ、あの、金曜日はすみませんでした」


同じ部署なのだからお二人も当然、件の会の参加者である。


「お見苦しい姿をお見せしてしまったようで…」
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