美しいだけの恋じゃない
「は、はい…」

「ただ、さっき話に出たように、故意にやったという前提で師岡さんに抗議する事はできなくて…」

「力になれなくてごめんね?」

「そ、そんな、とんでもないです」


すまなそうな表情で言葉を発するお二人に、私は慌てて返答した。


ほとんどの人が状況を把握して下さっているというだけで、充分に有難い。


誤解されストレートに悪意をぶつけられ、四面楚歌状態だった学生時代に比べれば…。


師岡さんに抗議できないという事はつまり、皆さんがそれだけ冷静に公平に客観的に物事を捉えていらっしゃるという証で、決して理不尽に誰かを責め立てたりはしないという事だ。


そんな風に、真の意味での「大人」の方達が集う、この会社に就職する事ができて、心の底から良かったと思う。


実は師岡さんだけでなく、別部署のごく一部の方にも、良い感情を持たれてはいないようなのだけれど…。


それでも、その方達と密に接しながら仕事をしなくちゃいけない訳ではないし、他に理解者がいるのだから、何とか頑張れる。


ただ、今回の事はとても悔やまれるけれど。


ここまで周りの方に変な印象を与えないように、細心の注意を払って行動して来たというのに、悪目立ちにも程がある失敗をしてしまった。


つくづく、あの時もっと早い段階で、手渡された飲み物がアルコールであると気が付いていれば…と思う。
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