美しいだけの恋じゃない
自分でも驚くくらい、冷たい声が出た。


「そこまでの過程がどうであれ、最後の最後に最悪な選択をしてしまったのだから、そんなの言い訳にすらなりませんよね」

「……そうだな」


私の主張に一瞬きつく目を閉じた後、再びゆっくりと開き、彼は掠れた声で言葉を繋いだ。


「謝って済む問題じゃないけど、それでも、言わせて欲しい。本当に俺は最低な事をしてしまった。申し訳ない」


言いながら、彼は深々と頭を下げた。


「止めて下さい」


彼とやり取りをしている間に、脈拍数はすっかり平常時に戻っていた。


「何度謝られても、許す事なんてできませんから」


先ほどまでの昂りは鳴りを潜めている。


心が、冷えきっているのを感じる。


「そんなパフォーマンス、やめていただけませんか?相手に無駄に罪悪感を抱かせるような行為は」


頭なんか下げたって、痛くも痒くもないではないか。


それを受け、彼はギクシャクとした動きで上体を起こした。


「あの時…」


さっさとその場から立ち去れば良いものを、私は更に彼に意見した。


「『初めてだったのか?』って、言いましたよね。しかも、とても意外そうに」


自分でも何故そんな気になったのかは分からないけれど、どうしても言わずにはいられなかった。
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