美しいだけの恋じゃない
「…仕事上は、これからもきちんと対応します。別にあなたの為ではありませんので。そうしないと、私自身が不利な立場に追い込まれるかもしれないからです。だけどそれ以外で、あなたに関わるつもりは毛頭ありませんから」


改めてその瞳をしっかりと見据えつつ言い捨てる。


「今後一切、仕事以外で、私に接触しないで下さい」


そして間髪入れず踵を返し、その場から駆け出した。


彼は呼び止める事も、すぐに後を追いかけて来る事もしなかった。


先ほどの階まで戻り、化粧室の個室に駆け込んだ私は、深呼吸を繰り返し、体と精神を充分に落ち着かせてからそこを出た。


そのまま同フロアにある営業部へと向かう。


始業時間まであと10分弱にまで迫っていたので、ほとんどの方が席に着いていた。


営業部は一課と二課に分かれているけれど、新年会は合同で行っていて、つまりこのスペース内に居るほぼ全員があのハプニングを目撃しているという事だ。


なので部長、それぞれの課の長、という順で席まで近付き、金曜日の醜態を詫びた後、他の皆さんにも順々に謝罪をして回る事にした。


まずは一課から。


一人一人にではなく、チームごとに分けて並べられているデスクの、主任の席の傍らに立って、そこにいらっしゃる皆さんに、まとめてではあったけれど。
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