美しいだけの恋じゃない
ほとんどの方は「気にしないで」「大変だったね」と声をかけて下さったけれど、師岡さんは完全に私を無視し、ずっと端末を操作していた。


いつの間にか着席していた、門倉保の所属するチーム、イコール私と田中さんと佐藤さんのチームにも立ち寄った。


案の定主任である井上さんに、あの夜の彼の活躍ぶりを熱心に解説されたので、内心苦々しく思いながらも、頑張って穏やかに見えるような表情を作り、彼に向けて礼を述べた。


「本当にお世話になったみたいで…。ありがとうございました。門倉さん」

「……いや。どういたしまして…」


私の心中を察したのか、彼も当たり障りなく言葉を返した。


お互い、周りに不審感を抱かせずに済んだと思う。


その後、パーテーションで仕切られたお隣の二課にももちろんお邪魔した。


こちらも概ね好意的な返答ばかりであったけれど、師岡さんと同期であるという山本さんという女性には、ちょっと冷ややかな眼差しを向けられてしまった。


でも、かなりだらしない姿を見せてしまったようだし、批判的な感情を持たれてしまうのは当然の事だと思う。


そこは真摯に受け止め、皆さんへの謝罪行脚を終えてから、ようやく自分の席へと着いた。


ほどなくして始業のチャイムが鳴り響き、毎朝恒例のミーティングが始まったので、他の社員同様、進行役の営業部長へと視線を向けた。
< 41 / 219 >

この作品をシェア

pagetop