シチリア
「ともかく、最近あなたが何か悩み事を抱えていることは、ええ、もう。女の勘と言うか、すぐにわかったの。
だからね、ジャン。わたしとあなたの間に隠し事はなしよ!さぁ、ジャン!最近何を悩んでいるの?!」
「……エマ、はしたないよ」
「あら、失礼」

勢いあまって、本当にテーブルの上に”乗って”しまったエマをいさめ、僕は視線をそらす。


言えるはずがない

自分以外の女のことで悩んでいるなんてエマに知られたら、一体どれほど怒り狂うのか……


想像に絶する。


「わたしに言えないこと?」

彼女の目が鋭く光る。

「い、いや、別に…」
「………わたし以外に女ができたのね…?」

ハッと小さく息を呑み、口元を両手で塞ぐエマ。

さながら、喜劇のヒロインだ




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