鬼社長のお気に入り!?
 目の前が真っ暗だ。前にもこんなことがあった気がする。と嫌なデジャヴを感じながら、私はとぼとぼと家路を歩いていた。


「うぅ、うえっ……」


 私はついに我慢しきれなくなって家につく前に泣き出してしまった。桐生さんが婚約すると聞いた時も確かに悲しかった、けれど、八神さんが婚約すると聞いて桐生さん以上の寂寥感と悲しみが一気に押し寄せた。


 八神さんにキスされた時のことをふと思い出す。けれど、私の唇にはもうその熱が甦ることはなく、単なる火遊び程度のキスたったのだと思い知らされる。
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