海の底の君へ。―天国の君へ―
【 幸 side 】
キャプテンが通しをすると声掛けする。
私は紫夏が心配だった。
───調子悪いくせに…
でもこの空気じゃ休むなんて言ってられない。
それはみんなも一緒だ。
どれだけ辛くても、どれだけ高熱でも
みんな部活に来て練習をする。
────とにかく、今は集中。
そして通しが始まる。
出だしは順調だった。
───ノーミスいけるかも。
私はそんな思いを胸に自分の基の人と
合わせて演技を続ける。
そんな時だった。
「バタンっっっ!!!」
隣の基から激しい音がする。
───え…?
落ちたのは、
「紫夏…?」
顔は青白くて、息も背中を打った衝撃で
喘息を引き起こしそうだった。
私ははっと我に返り急いで吸入器を探す。
持って行くと周りには先輩やコーチまで
集まってきていて、
私はとにかく紫夏に吸入器を渡す。
「スーハースーハースーハー、ウゥ…ッッッ…。」
苦しそうな紫夏の背中をさする。
その時だった。
紫夏の体がビクンとして、急に目を閉じた
「え…?」
それはすぐにわかった。
「AED……早くっ!!!」
私はとっさに叫ぶ。
やだ…なんで紫夏…。
私が止めればこんな事にはならなかった?
お願い紫夏、行かないで。
紫夏……紫夏!!!!!
先輩が持ってきてくれたAEDを
保健室の先生は急いで着けた。
周りの子は離れる。
私は離れたくなかったけど
無理やり同期に剥がされた。
「紫夏ぅっっ…紫夏!!!!」
私は泣き叫ぶ。
お願い…お願い。
「こっちですっ!!!」
救急隊員がきた。
急いで担架で運ばれる。
私はコーチにお願いをした。
「コーチ!!!
お願いします、付き添わせてくださいっ…
お願いしますっ…お願いしますっ!!」
「わかった、早く来て!!!」
私はそのまま救急車に乗った。