柴犬主任の可愛い人
なるほどなるほど。確かにそのまんま。名前から一文字減らしただけの愛称は、主任の御両親が無二の柴犬好きだからそうなったらしい。名字が柴なんて、もう当人たちにとっては運命だろう。
「賢太の“太”は、本当は付けたくなかったらしい、シバケンのお袋さんは。“賢”もこの漢字にするの渋ってたらしい」
「父が、それはちょっとと母を思い留まらせてくれてこうなりました」
柴犬は、“シバイヌ”って読むんじゃなかったけか? 私の周囲ではそうだったけど正解は知らない。などと、こちらも気持ちよく酔ってきた頭がどうでもいいことを考えながら、それらは流すことにした。掘り下げることじゃないだろう。ご本人たちが楽しそうだからいっか。
あ、でも……、
「いや。どちらかというと、トイプードルだと思います」
どうやら、人見知りだったような店長さんは緊張を解してくれたのか、私にも普通に接してくれるようになり、よりお店の居心地は快適になって。それは偶然ここでお会いした主任の存在も大きくて。女将さんは、相変わらず眼福のお綺麗さで今は店長さんたちを立てながら控え目に微笑んでるし最高だ。
なんだか楽しくなってきて、知らず心の声は一部心だけに留まってくれなかった。
「なぜトイプードルなんですか?」
「えっとですね、柴ちゃんは孤高のツンな犬です。デレなんか皆無というくらいにクールで可愛いんですけど、主任は意外に甘えたさんのようなのでトイプーです。柴ちゃんからはお名前だけ拝借、といった感じですね~」
主任のことじゃないけど柴ちゃんと言ってしまったり、上司をトイプードル呼ばわりした非礼に私が気付くのは、翌日の昼過ぎ、遅く起きた休日こと。甘えたなんて恥ずかしいですね、と主任はそれでも店長さんにイチャイチャし続け、気持ち悪いと罵られてた。