柴犬主任の可愛い人
「あっ、ちなみに朝まで僕の家でお兄さんと呑んでいて、青葉さんのお宅まで送り届けてまた家に帰ってきて、さっぱりしてから散歩ついでに来ました」
健康的でしょうと自慢されたけどそうでもない。なんだかお兄さんと友達になっちゃいました~、と嬉しそうな柴主任。とりあえず、愚兄のお世話のお礼をしようとしたけど、寝ている私には頭を下げられないし、何処へ行っていたかによってはお礼したくないっ。
もそもそと手を動かし、柴主任のパーカーを引き寄せ顔を覆う。
「そんなにいい匂いですか」
「……違います」
聞かれてましたよね……だって誰もいないと思っての独り言だったんだよ、いい匂い発言は。
けどそうじゃない。柴主任がカーテンを開けたりなんかするからだ。そりゃ、薄暗い朝なんか嫌だけどさ。
「……違いますよ。私寝起きだし、お風呂入れてないし寝癖だし、顔が浮腫んでる感覚がします。口角がねっ、上がりにくいから絶対そうなってるんですよ」
「そんなことですか。盲腸なんだから仕方がないでしょう。今さら今さら」
「っ、これでも一応性別女子なんですよっ……何が悲しくて上司におブスなとこばっかり曝さなきゃいけないんですか。そりゃ、私がヘルプ言ったけど」
なんか……柴主任は距離感が近いのだ。仲良くなると、中学生マブダチコンビみたいな扱いを当然だとやってのけてくる。そして、 それを拒絶されると少し傷ついてみるものだから、私も減るもんじゃないしと、心底嫌じゃないから受け入れてる。
けど、恥じらいくらいもっちゃうでしょうが。
加齢臭が気になり始めるお年頃のくせに、そのへん無頓着というかピュアで困る。
「寝起きだろうと顔がパンパンだろうと、部屋で短パンで転がっていようと、青葉さんは可愛いから大丈夫ですよ。ちゃんと初めから言っているでしょう」
ほら……こんなところもちょっと困るのだ。
「……短パンじゃなくてハーフパンツです。あれ」
高校の体操着だったものだけどね。
物を大切に出来るっていいですよね。なんて言いながら、私が反応に迷うのを見て笑うのを、パーカーの隙間から覗き見た。