柴犬主任の可愛い人

 
私が入社する前のことだから、四年前かもう少し過去のこと――――……




まだ柴主任が主任じゃない、職場も肩書きもまだ今とは違った頃のこと。


結婚間近だった主任は、一歩間違えば警察に引き渡され逮捕、社が表沙汰にしなかったとしたら、クビにされてた。
らしい。あくまで人づてだ。
容疑は横領。どんな種類のものかは知らない。


横領は、もちろん主任のしたことじゃなかったけど、犯人は発覚した犯罪を主任に擦り付けたのだそう。
犯人は主任の同期で、当事同期の中でも出世が早い、けれど性格は最悪な人物だったと、それも噂で耳にした。
加えて……犯人の手助けを率先して行っていたのが、主任の婚約者だった。婚約者は犯人とも付き合っていて、そちらを本命に変更したらしい。


主任は、己に降りかかった濡れ衣を晴らすため動き、周囲もそれに手を貸す者が多く、査問にかけられる前に解決した。




……――――などと、噂で知った過去を思い浮かべた。


あくまで噂なんだと、思ってた。
馬鹿みたい。出世頭というだけで婚約者は男を乗り換えたんだろうか。顔は知らないけど性格悪いらしいし。
なんにしろ碌な考えじゃない。共犯して主任を陥れようとするなど。
知らないことをあれこれ言うのは間違ってるけど、間違ったことをした人たちに対して罪悪感はあまりない。


まあ、そんな人と何故婚約をしてたのか、という主任への疑問も、当事を知らない私はあるけど――。
まあ、悪人も全てが悪じゃないということかもしれない、ということにしておく。主任だって馬鹿じゃないのだ。それは今一緒に仕事をしていてわかることだし、そう変わる部分じゃない。


信頼出来る上司だ。昔からそんな人だったからきっと、事件の際周囲が信じて助けてくれたのだと思う。本人の資質と能力があってのことだったんじゃないかな。




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