柴犬主任の可愛い人
「何か困ったことや悩み事があれば、力になれたらと思います。忙しいとか金欠というのは……やはり嘘のようだったから、他にあるんですよね。ずっと、皆心配していますよ」
小金ならある宣言を聞かれてたことを思い出す。柴主任と亮さんは、金欠を、嘘かもしれないけどもしかしてと、心底心配してくれていたみたいで。私と広瀬の会話を立ち聞いて、安心したはしたけど、イラッともきたらしい。
華さんは、とても律儀に秘密にしてくれたみたい。
「心配していたところに広瀬くんの家に行くとか、男ばかりのそこに泊まるとかしようとしているものだから、やけになっているのかと……」
「っ、汐里がいますからっ」
「そんなこと、言われなければわかりませんよ」
子供騙しの理由が通じるわけないのは承知だったけど、来ないなら来ないで仕方がない。縁とはそういうものだとして、いずれ私が通わなくても、それが日常的になっていくことには、なっていってはくれなかったみたいだ。
心配してくれた、という事実を噛みしめる。それだけで充分幸せなんだから。
「――、ご心配おかけしてすみませんでした。大丈夫です。そのうちきっと、解決することなので」
「……」
「お時間とらせてしまってすみませんでした。仕事、戻りましょう。今日はちょっと早く帰らないといけないんで。柴主任も、雪で電車止まっちゃう前に帰らないと」
「そう、ですね。……また、伊呂波には来てくれますか?」
「っ、……はい……そのうち」
「そのうち? 近いうちですか?」
「そう……ですね」
いつの間にか、ぎこちなさもなくなった柴主任との会話。もうさっきまでのことは忘れよう。柴主任もそうしようと努力してくれているみたいだし、良かったと、曖昧に交わした約束は、
「じゃあ、今日来てください。伊呂波に」
「えっ……?」
「お願いです」
何故か、気持ちの急いてしょうがない柴主任から、一刻でも早くと願われた。