柴犬主任の可愛い人
そうして、こんなとこだけリアリストだと泣きたくなる。
余韻に浸る間もなく、伝えてしまって良かったのかと、言ってしまってから青ざめた。
好きだと、幸運にもお互いが想っていて。
それからは……?
付き合うの?
ここは、社内恋愛には厳しい会社だ。
多分……バレそうな予感がする。
好きですと伝えたあと、私はずっと柴主任の胸の中にぎゅうぎゅうと抱きしめられている。現実に目を向けてみれば、ここはその職場で。嬉しい幸せだと悶えてくれるのは光栄だけど、おそらく柴主任に秘密は無理な気がする。
「私たち、付き合うんですか?」
「えぇっ、なんでっ!?」
色々と不安になり、懸念事項の諸々を相談してみれば、柴主任は私を抱きしめるのをやめて、帰りましょうと焦りだす。
「どうしたんですか?」
「とりあえず結婚しましょう。……このままだと青葉さんに逃げられる気がする」
双方の両親への挨拶は、明日私の実家のほうへ詫びに行くと計画している柴主任はどうやら本気だ。
「逃げませんって!!」
「いいじゃないですか結婚くらい!! 僕はいつでもウェルカムなんですからっ。ちゃんと鍵付き洗面所のある家建てますからいいでしょうっ」
「結婚くらいってなんですかっ。私は準備不足ですっ。いっ、家って何っ? マンション売ったばっかでしょっ」
「……そんなこと言って、付き合ってももらえないままうやむやにする気ですかっ?」
「付き合いますからっ」
なんだか流され言質はとられてしまった。結婚してもよかったのにとぶつくさごねる柴主任は、ひとしきりそうしたら気が収まったのか、大丈夫だ大丈夫だと、根拠もない安心をくれる。
「大丈夫ですよ」
「……」
……まあ、腹をくくるしか結局はないのだ。
くくるくらいで柴主任が手に入るのなら、それはもうどれだけでもくくられたいと、私の恋愛脳はどエムみたいだ。狂喜乱舞。
「もしバレたら私が異動しますからね。上司なら、それくらいは上に掛け合って下さい」
じゃなければ退職しますと意気込んで、今日のところは解散しましょうと廊下への扉を開けると、何故かそこには広瀬がいた。
……、