柴犬主任の可愛い人
助かった。
助かったんだけど……。
「……柴主任」
「なんでしょうか」
「絶対あの古村さんて人、柴主任が昔のことまだ引きずってると思ってますよ。いいんですか?」
もう自分は平気なんだし、哀れむ目が好きじゃないとか言ってたのに。私のせい……。けど柴主任は、物わかりのいい荒立ってなんか全くない表情をたたえるばかりで。
「大丈夫。ああ言わなくても、僕がまだずいぶん引きずってると思っているのは、実は古村が一番だし」
「なっ!! だったら……っ」
「けれども、僕のことが下衆な噂になると一番怒ってくれてるのも古村だから、いいんです」
多少思い込み激しくて強引ですがいい同期なんですよ。記録係の柴主任はもやもやしたままの私の顔を一枚撮っていった。
「僕は、神田さんを助けられたうえに、神田さんがそうやって怒って気にしてくれただけで充分です」
「気になんてしてないっ」
はいはい、感情が豊かでいいことです――言われれば、社の人間溢れる中でのこそこそ話は、私の大きくなっていく声含め、口をつぐまざるをえなくなった。
それを突っ込むことなく話すタイミングも逃しまくっての、今である。
自分が口にすることは、誰にそれが伝わってしまっても構わないものしかない、と柴主任は以前に伊呂波で言ってたけど、痛手を負わないわけじゃないよね。
そういうのは、私にはまだ無理。
何年か後なら柴主任みたいになれるんだろうか。
「――ああ。古村のこと?」
「そうです」
「全く気にしてないですから」
「それでも、ありがとうございました」
ようやく意思の疎通の叶った柴主任と、 来年は屋内の涼しいところでの開催を次回仕切り担当に促そうと誓う。
「また来年も古村さんが来たらどうしよう……てか頻繁に勧誘来たら死ぬ」
「ははっ。古村が担当外れない限りそうかもしれません」
「嫌だっ!!」
「その時は僕が追い払ってあげましょう。付き合う人が出来て必要なくなったり、婚活に励みたくなったら、言って下さいね」
そんなことにはならないでしょう。当面の未来の私を予測した。