柴犬主任の可愛い人

 
「――こちらは、主任のご実家なんですか?」


散々謝り倒してから訊ねる。そうならば、店長さんか女将さんとは血縁があるのか? それにしては似てないなあと三人を見比べた。


「そうなんです。実は」


「嘘ばっか言ってんじゃねえよっ、このシバケンがっ!!」


登場が、どうやらお店の奥にある厨房からだったらしい主任に訊ねてみると、そんな返答。すかさずそれを否定したのは店長さんで、そのあと主任は店長さんにつむじチョップをお見舞いされてた。


まずは挨拶だとか、ここで鉢合わせするのは偶然ですねとか、いきなり隣に主任がいたものだからそういうのは省いてしまった。だって、あまりにも自然にそこにいたものだから違和感がなかったのだ。だから身内かと思ったんだし。
改めて挨拶を済ませると、主任からもいつもの、会社のそれより寛いだ様子で丁寧に返される。さすがご実家だと嘯くだけの場所だ。


「柴くんはね、同級生なのよ」


柴くんとは、主任のことだ。柴主任。


つむじチョップによりカウンター越しの攻防が始まってしまった主任と店長さんをスルーしながら、女将さんは今日は閉店だと暖簾を片付けてしまい、まるで課長の奥さんのように、私に主任がいつもお世話になっていますと頭を下げる。それを見た店長さんは、一層攻撃の度合いを強めたのだった。主任は、笑いながら痛い痛いと店長をかわしていた。




なんとなく、なりゆきでそこから長い時間をお店に居座り続けてしまった。


私以外のこの空間にいらっしゃる御三方は、中学校からの友達で、主任は頻繁にここへ出入りしてるらしい。主任が作ってたお菓子は店長ご夫妻のお子さんへのもので、小麦のアレルギーなお子さんの為にと精を出したのだそうだ。


「あんなもんなら俺にだって作れる」


「免許持ちに敵うなんて思ってないさ」


友達とじゃれる主任は、やっぱり会社では見せないプライベートな様子で寛いでた。


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