So Far away
孤独
「……最悪。」

その若い男性が個室に入ってきた瞬間私は眉間にしわを寄せ、舌打ちをした。


「会いたくなんかなかったのに。」
男性はこちらの意見を聞いていないようだ。あどけない小さな子供のように個室を見回して、手前の席に座る。
男性と対するように座り、迂闊に目を正面に向けられなくなった。
彼はまだキョロキョロして個室にばかり興味を示している。
相変わらず子供みたいだ。

「ねぇ、あんたさ。」

呟くように、小さく声をかけた。

「どうして会いに来たのよ?引っ越すなんてあんたに伝えてたっけ?」

彼は答えない。
こちらの方にすら、向かない。

「まぁ、答えたくなかったらいいけど。」

ふてくされた子供のように、少し頬を膨らませて、極力彼を見ないようにした。
彼の好奇心は絶えないみたいだ。
まるでこちらに気づいてない。いや、本当に気づいてない。
出来たら答えてほしかった。
うなずくなり苦笑いなりしてくれればよかったものの。
これでは人がいるのに孤独なまんまだ。

最悪だ。

何回目でもいい。
この言葉しか出ない。

よりによってこいつに会うなんて。
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