蜜愛フラストレーション


押さえつけられて痛みに顔を顰める私を見下ろす彼の瞳は、悔しさと怒りを滲ませている。

「ま、つきさんっ、やめ」

追いつめられた私の身体は震えが止まらない。それでも必死に声を上げると、ギッと睨みつけられた。

そこで前方から無遠慮に伸びてきた腕に抱き竦められてしまう。

「いやっ!」

あまりの嫌悪感から、ぞくりと戦慄が走った。

抜け出そうと足掻くものの、背中に回された力は手加減を見せず。私の抵抗なんて、大柄の彼には赤子の手を捻るようなものだろう。


片手で私を封じ込めた彼は、もうひとつの手で顎先を痛いくらいに引き上げる。

煮え滾るような双眸が一気に顔に近づき、そのまま唇に触れてきた。

「やめっ、ん!や……っ!」

ぞわり、と全身を拒絶感が駆け巡る。顔を背けようともがけば、腰に回る力がまた強まった。

煙草の香り漂う舌を捩じ込みかけられた時、私はハイヒールですねを思いきり蹴り上げていた。

今日履いていたのは7センチの高さに、細めのヒールのもの。不意をつかれればそれなりに痛いだろう。

背中に回っていた手が緩んだ隙をついて、渾身の力で目の前の胸を押しやった。

そして、一瞬よろついた松木さんの頬を加減無しで引っ叩いてしまう。

彼を叩いた手のひらがジンジンと熱を帯びる。それでも震える足で距離を取り、近くにあった物を手当り次第に投げる。


「ど、して……こんなっ、」

生理的な涙が瞳に膜を張り、頬を伝いはらりと滑り落ちていく。

今も残る感触と香りを消し去りたくて、ほぼ無意識に唇を強く擦っていた。

キスぐらい大したことない、そう思っていたのに。やっぱり身体は正直だ。

優斗と昨夜したキスが塗り潰されたショックも涙腺を刺激し、呼吸が苦しくなる。

恐怖に心を支配された以前の記憶まで蘇ってくる中で、とても助けを呼ぶ声を上げられない。


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