蜜愛フラストレーション
かたかた小刻みに身体が震えが止まらなくなる。少しだって触れられたくない、早くこの場から逃げ切りたいのに。
男女の力の差は歴然。泣きながら頑なに拒否するだけの自分に吐き気さえした。
「……やめっ、」
そこで首筋を吸われる感覚が襲い、業火の中に足を踏み入れたように心が痛む。
このまま燃え尽きてしまいそうなほど、身体が言うことを聞かず涙が溢れ出てきた。
プツン、プツンと焦れた手つきでボタンが外される中、不意にキスされそうになった私は咄嗟に顔を横に背けて、キュッと唇を強く噛んだ。
「それじゃあ傷になる……ッ、いってぇな!」
「……うっ、」
唇に差し込まれた指を目一杯噛んだ瞬間、頬を打たれた鋭い痛みでうめき声が漏れた。
おかしな体勢での不意打ちで口の中が切れたのか、痛みとともに嫌な鉄の味がじわりと広がる。
ついに直接的な暴力に遭い、踏ん張りにも限界が近づく。しかし、指先を伝う鮮血を見せつけて笑う男がそれを遮った。
「あ、ごめん萌ちゃん。でも、お互いさまだよ?」と。
こちらの自由を奪って、無理やり犯そうとしながらお互いさま?……これが同意の上って言いたいわけ?
プツッと頭の中の線が切れた瞬間、勢いよく足を振り上げたら、ヒールの先端が松木さんの下腹部に直撃。
「っ、」
彼が苦悶の表情でよろめいた瞬間をつき、咄嗟に起き上がろうとする。
だが、テーブルを降りる寸前、激情まみれた顔の松木さんが再び私を倒しにかかった。
「い、やぁああ!たすけ、てっ……っ、」
「誰に助けて貰いたいの?」
「っ、いやぁ……っ!」
頬を殴られた痛みと肩を押さえつける強い力。さらに両手を捕われ、逃げる術を完全に奪われてしまう。
——それでも、大切な人の名前だけは呼べなかった。
これまで、僅かに残る理性が優斗と紡ぐのだけは塞き止めてきた。……こんな時だからこそ、呼んではいけないと。
声にならない声で、彼を求めていても、キュッと唇を噛んで我慢。その度に広がる、鉄の味と微かな痛みが踏み止まらせていたのだ。