蜜愛フラストレーション


さて、この家は1LDKながら上へと広い天井高の特徴を持つ。現在地の玄関から、コンクリート壁で囲われたリビングまでは直通。

室内のらせん階段を上がった先にはドアのない寝室があり、デザイナーズ物件らしい小洒落た造りをしている。

たとえ階段を上がるのが辛くても、リビングには大きなソファが置かれている。その最低ラインへの道のりも20秒あれば到着するのだ。

そもそも彼自身、“我慢出来ない状態”ではない。——さっきの態度は、暗にそんな嫌味を込めていた。

すると、それまでお腹に回っていた両手が外れ、今度は片手で肩をグッと引かれてしまう。

「それもいいね」

そう言いながら、自由の効く片手で髪をかき分けられる。晒された首筋をランダムな彼の指が、つと撫でていく。

緩やかに性感を刺激され、なぞられる度に私の身体には、ぞくりと粟立つ感覚がひた走る。

くすり、と背後で一笑した北川氏。その声をわざと耳元で聞かせるところが確信犯だ。

機嫌が良いのか、苛立っているのか読めない彼に掻き抱かれながら、私の身体は呆気なく熱が冷めていった。

含みをもって触れるのを止めたのだから、もう離して欲しい。その願いも虚しく、暫くして不埒な手先は腰の辺りを遠慮なく撫で始めた。

チュッ、とリップノイズを立てて落ちてきた乾いた唇。それは甘い感覚とは程遠く、ついに我慢の度を超えた私は口を開いた。


「さっきから黙っていれば何なの?サディスティックにしては生易しい所業でしょ、ねえ違う?
連れ込んだくせにひとりで楽しまないで。何がおかしいのか本気で理解に苦しむ。……って、ああ私たちそりが合わないし、これはひとまず捨て置く。
今のが前戯って言うなら論外。今日はこのまま帰らせて。——私はっ、……優斗のおもちゃじゃ、ないっ。馬鹿にしないでっ!」

苛立ちのままに言い連ねるつもりだったのに。最後の最後で、目の奥が熱くなり言葉に詰まってしまう。

やっぱり、今夜は悪酔いでもしていたのか。これはもう、醜い嫉妬と八つ当たりだ。


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