蜜愛フラストレーション
辿り着いたエントランスを潜り、エレベーターに乗り込んでからも続く沈黙の時間。
上昇するエレベーターの中でも息苦しい状態は継続中。まるで告白したことが遠い出来事のように感じられ、段々と腹が立ってきた。
この厄介な状況を打開する手立てもない。……ユリアさんの“ぶん殴っていい“発言、まだ有効だろうか?
混乱のピークで頭をかきむしりたい心情に駆られていたら、エレベーターが目的階で停止する。
先に一歩踏み出したのは優斗のほう。その後に続くと、背後でエレベーターの扉が閉まる音が聞こえた。
今までよりはこちらの歩くスピードに合わせてくれ、掴む腕の力も随分緩やかになった。
結局、不親切になりきれない彼を恨めしく思いつつ、少し前を歩くその姿を静かに見つめて歩いた。
エレベーター口から三つ目のドアの前で歩みを止めた彼によりその扉が解錠される。
そこで扉の端を支えて待つ彼はどこか苛立った視線を私に寄越し、中へ入るよう促してくるのだ。
あからさまな態度にムッとし、「お邪魔しますっ!」と語気を強く言い切り、ふんと顔を背けて進んだ。
はたと、面倒なサンダルを履いた足元へ視線を落とす。苛立ちながら急いでストラップを外して上がると、バタンと重みのある音が響いた。
「萌」
背後から落ち着いた声で呼ばれて立ち止まる。……ここで無視するのは大変よろしくないのは重々承知しているのだ。
ひとつ溜め息をついた私が不満顔で振り返ると、素早い動きで靴を脱ぎ捨て目の前に立った彼。
首を傾げながら顔を上げたその刹那。後頭部を支えるように掴まれ、言葉を交わす間もなく唇を塞がれていた。