蜜愛フラストレーション


目を見開いたまま呆然とする私は、触れる唇と鼻先の向こうの茶色の瞳を捉えた。

「あ、」と、そこで私は無意識にこの状態の理由を尋ねようとしたらしい。

しかし、それは途轍もない失態だったとすぐに気づくことになる。

僅かに開いた口の中から舌が侵入し、重なる唇くちゅり、といやらしい水音が響く。

ねっとりとした動きで咥内をなぞるその舌先から、今は逃げる術もない。

両手で目の前の胸を押すものの、動揺は隠れず。つぶさにそれを感じ取った彼の眦が少し下がる。

交わり続ける視線の中で、深いキスに応じるのだけはどうにか防いでいた。

それでも、微かに細められた眼差しはいつになく情欲に塗れていて、足下が震え始めた。

舌の絡み合いが続き、口先から零れるように透明な唾液が顎先を伝う。

すっかり目を伏せるタイミングを逸した私は、もはや我慢比べのように、色気をまき散らす男の瞳を凝視する。

それも呼吸さえ侭ならない状況下のせい。足を踏み入れた時はひんやり冷たかったはずの室内も、今はまた外に出たような暑さを感じる。

容赦ない動きで唇を重ねられ続け、思考回路が熱によってさらに失われていた。

何度も角度を変えて続いたキスに漸く満足したのか、開放感を味わえた時にはもう息も絶え絶え。

はぁはぁ、と大きく深呼吸しながら睨むものの、目の前の相手は嬉々としている。

まるで私の告白なんてなかったようなその態度。さすがに我慢の限界を越えた瞬間、いつになく極上の笑顔でこう言われる。


「さっき告白してくれた時の萌が可愛すぎて、どうしようか考えながら来たんだよね。
運転中からずっと我慢してたの、気づいてなかった?」


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