bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
定時が過ぎて、隣で帰り仕度をしている香奈子先輩が私のパソコンを覗きこんでくる。
書き始めたばかりの始末書は、まだまだ空白も多くて、なかなか進まずにいた。
「すっぽかした会議も打ち合わせもなかったのに、始末書ねぇ。相変わらず、本郷主任はひかりにだけ厳しいわね」
「仕方ないです。私が悪かったので。プロジェクトチームから下ろされなかっただけ幸せです」
本郷主任が席を外しているのをいいことに
「本郷主任の愛のムチね」
意味深に香奈子先輩は私に小悪魔の笑顔を見せながら囁いた。
自分でも顔が熱を帯びて帯びていくのがわかる。
それが恥ずかしくて、私は自分に落ち着くように暗示を掛けながら大きく息を吐いた。
「きっと本郷主任は、成長してくれるひかりが可愛くて仕方ないのよ。だからひかりが単純なミスとか今日みたいな遅刻とかすると他の社員以上にイラってしちゃうのかもね」
香奈子先輩は、そんな私の様子を見ながら全てをお見通しといった顔をしていた。
「私も、本郷主任に認めて欲しくて、頑張って仕事してるんですけど。なかなか…」
これ以上言葉にすると涙が溢れてきそうで、最後の方は口ごもってしまって、下唇を噛んだ。
香奈子先輩は優しく私の頭をポンポンと軽く叩いて
「頑張れ、頑張れ」
そう言って帰っていった。