bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
「おはよう、安藤」
「おっ、おはようございます」
いつもと異なるシチュエーションに私はドギマギして、ぎこちない挨拶を交わしてしまう。
それ様子をみて本郷主任は今にも吹き出しそうにしていた。
「安藤、俺今日はコーヒーいらないから」
一言、そう伝えて、本郷主任は私に背を向けて、フロアに歩いていく。
本郷主任の残り香についさっき飲んだばかりだろうと思われるコーヒーの匂いと煙草の匂いが強く残った。
「何で?」
本郷主任の背中に向かって、そう呟くと、気分が落ち込んでいく。
誰かの淹れてくれたコーヒーをきっと朝から飲んできたんだろうな
本郷主任の大切な誰か。
きっと、私の知らない本郷主任を知っている誰か。
その誰かの淹れてくれたコーヒー。
そう思ったら、急にどこか知らないところに取り残されたような寂しい気持ちになってきて、涙がこぼれそうになった。