bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
唯野さんは時々こんなことをしている。
ここで時間を潰し、毎日ちょうど8時半頃に出勤してくる。
以前何をしているのか気になり、同じ会議に出た後に
「そういえば、なんで朝早く来ているのに、車の中で時間つぶしているんですか?」
単刀直入に聞いたことが、ある。
「本郷さんには、わからないと思いますが」
唯野さんは、俺の前ではフロアで見せるような笑顔を見せない。
笑顔どころか冷たい表情で俺を見下したように言葉を掛ける。
そんな唯野さんが俺は苦手だ。
「はぁ」
思わずため息をついてしまった俺に、資料を片付け終わり会議室を後にしようとした唯野さんが投げ捨てるように言葉を吐いた。
「上司があまり早く出勤したら、それを気にして早く出勤する部下が必ず出てくるので。部下には、そういう余計な気配りやストレスはかけたくないので。あっ、それに無意味やたらに怒鳴りつけて、ストレスもかけたくないので。じゃ、おつかれ様」
俺は、一言も返さず、会議室から出て行く唯野さんを睨み返しただけだった。
唯野さんは言葉では言わないものの、俺が入社して主任になってから、俺のやり方が気に入らないことは、態度で伝わっていた。
それが、この時はっきり言葉で言われてしまった。
言い返しはしなかったが、自分のやり方を変えるつもりも毛頭なかった。