bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
「お前、なんで居るの?」
スーツのシャツとは違う柔らかそうな生地の白いシャツをはおり、細身の黒のズボンを履いたいつもよりラフな格好をした本郷主任が、目を丸くして立っている。
スーツ姿ではない本郷主任は雰囲気がいつもより柔らかで、鬼のベールを脱ぐと女子社員が騒ぐのも納得が出来るほどかっこいい。
やっぱり私ミーハーなんだななんて思いながら、なんだか胸がざわつく気がした。
「お疲れさまです。ちょっと、仕事残ってたから、もうすぐ帰ります。」
この前のことを意識しすぎて、思わず俯きがちに言うと、本郷主任はふーんと鼻で返事をした。
私のデスクの近くを通ると、いつものムスクの香水の匂いと煙草の苦い匂いが混じって、この間の抱擁を私の頭の中に鮮明に思い起こさせる。
「主任、コーヒー飲みます?」
私は自分の頭をクールダウンしたくて、主任の答えも聞かずそそくさと給湯室に逃げ込んだ。