甘々王子にユウワクされて。
「それじゃ落ちるよきみ」
「は……はい」
そう言われて、ほんの少しだけ握っていた彼のカーディガンを離して、そっとそのからだに腕を巻きつけてみる。
華奢だと思っていた彼だけど、やっぱりわたしなんかとは比べ物にならないくらいかたくて。
予期しなかった男の子との接触に、心臓を暴れさせてしまう。
彼は終始無言で。
いつも20分ほどかかる道のりをほんの数分で行ってみせては、それじゃ、と無愛想に言って、自転車をUターンさせた。
「あ……っ、ありがとうございました」
慌てて彼の後姿にお礼を言ったけれど、聞こえたかどうかは分からない。
ちょうどよく電車も来てしまった。
……明日も会える、明日でいっか。
そう思いながら、改札に駆け込んだ。
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