甘々王子にユウワクされて。
「あー……ごめん!」
忙しいよね、と、悲しそうな目をして言った彼。
少し胸が痛くなる。
だけどすぐに彼は明るい笑顔に戻って、ついていこうか、と言ってくれたけれど、断った。
……木林くんと関わるなと言っていた本人に会いに行くのだから。
屋上に出ると、初夏のさわやかな風が罪悪感に満ちたわたしを迎えてくれた。
見渡したところ、こんなに気持ちがいいのに人は全然いなかった。
やっぱり、わざわざ階段を上ってまで屋上にこようとは思わないみたい。
南、と言われてもわからなかったので、とりあえず北校舎の反対側を目指して歩いていく。
そうすると少しだけ高くなっているところを見つけて、そこに向かってみる。
そこに見つけた、綺麗な黒髪を風に遊ばせる一人の男子生徒。
高槻くんが、何をするでもなくぼんやりと遠くを眺めて座っていた。
物理的距離はそんなにないのに、なんだかその背中がすべてを拒否しているように見えて。
ぶあつい壁が、見えたような気がして。
声をかけられなかった。