ベビーフェイスと甘い嘘

そう言えば鞠枝さんが「時々ね、相澤さん凄く優しい目で初花ちゃんのこと見てるのよ」と言っていた。

あの嫌みな男の『優しい目』とやらを見てみたい。
気がある素振りなんて見せたらそれをネタにしてこの前の何倍もキツい嫌みを返してやるんだから。

いつもはあまり気の進まない職場の人との飲み会に、ひとつ邪な楽しみを見つけて私はスマホを鞄にしまった。

明日は土曜日。家族で水族館へと出掛ける日だけど、修吾は今日も残業だから翔は芽依の所に連れて行ってそのまま泊まるつもりだった。

家に帰って着替えたら、翔を迎えに行って、芽依のとこで一緒に晩ごはんを作って、コンビニに向かう。
これからの流れを頭の中で組み立てながら家路を急いだ。


***

流れや予定通りにいかないのが現実ってヤツで。

お迎えでお喋りなママにつかまり、晩ごはんの買い物に手間取り、「ママいかないで!」とぐずる翔をなだめながら芽依に預けてコンビニに着いたのは初花ちゃんのシフトが終わる10分前だった。


「遅くなってごめんっ。何か手伝うことある?」

店の前で横倒しにした笹から短冊を外している初花ちゃんに声をかけた。

「わぁ、茜さん!助かります!」

ほとんど作業も終わりかけているのに、そう答えてくれる気遣いが嬉しい。

一緒に短冊を外して、飾りはゴミ袋へと入れた。
あんなに一生懸命に作った飾りをゴミにして捨ててしまうのはちょっと残念だけど。

「短冊は7月いっぱいくらいまでお店に飾りましょうか。せっかく書いてもらいましたからね」

初花ちゃんはそう言うと、短冊を抱えながら店内へと戻って行った。
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