ベビーフェイスと甘い嘘

「鞠枝さん、お疲れ様でした!乾杯っ!」

初花ちゃんの発声で鞠枝さんの送別会が始まった。

最近お酒が絡むとろくな事にならないから、今日はあまり飲み過ぎないようにしようと心に決めていた。

そんな私の向かいでウキウキとジョッキを傾ける初花ちゃん。彼女はかなりの酒豪だ。前のオーナーの誘いで顔を出した飲み会では、鞠枝さんと二人で次々とジョッキを空にして、ワインのボトルを空け、その飲みっぷりに唖然としたものだ。

鞠枝さんが初花ちゃんを恨めしそうに見ている。あれだけ飲む人だ。禁酒生活は辛いだろう。

「もう母親なんだから我慢しなさいな」

一応母親として声をかけてみる。
出産したって授乳が終わるまで思う通りに飲めないのよ、って今教えたらさすがに可愛そうね……そんなことを思いながら。


未成年の唯ちゃんはソフトドリンクを飲んでいて、初花ちゃんの隣で静かに呑んでいるように見える……店長のグラスも中身は烏龍茶だった。

「あれ?相澤さん飲まないの?」

鞠枝さんがそれとなく声をかける。

「俺、酒弱いんですよ。明日も仕事なんで。雰囲気は楽しめますから、十分ですよ」そう言いながら店長はふわりと微笑んだ。

……嘘くさい笑顔だわ。

店長目当てのお客さんなら、こんな笑顔を向けられたら一撃でしょうけど。

一撃をくらったように惚けている唯ちゃんを横目に、私は冷めた心でその光景を見ていた。
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