ベビーフェイスと甘い嘘
彼女みたいに、純粋に恋を信じられたのはいくつまでだったっけ。
この感情は恋だとはっきりと言えた自分なんて、もうとっくに忘れてしまった。
だって歳を重ねるとストレートに好きだと口にすることもできなくなって……余計な感情ばかりが複雑に絡まるから自分でも困ってしまう。
……あれ?
……困ってしまう?
今は恋をすることも、する必要だってないから困ることなんてないのに。
気がつけば、目の前のジョッキが空になっていた。
人の話題を自分の感情で考えちゃうなんて……飲み過ぎたのかも。
「さすがさとり世代。理解不能だわ」
みんなの話に意識を戻した途端に鞠枝さんが溜息をつきながらそんな事を言うから、なんだか笑いたくなってしまった。
……やっぱり酔っているみたいだ。けらけらと笑い出したい気持ちを押さえて再び話に加わる。
「あら、ゆとり世代だって理解不能だったわよ」
一応「ね、店長」と、ゆとりでもさとりでもない同い年の男に向かって同意を求めてみる。
だけど店長は何も言葉を返さずに、ただ薄い唇の端をきゅっと上げて笑っただけだった。
……何か言いなさいよ。
やっぱり気の合わない人に話しかけるもんじゃない。
飲み過ぎないようにしなきゃと固く心に誓っていたことなんてすっかり忘れて、タブレットで3杯目のジョッキを注文してしまっていた。