ベビーフェイスと甘い嘘

送別会も終盤に差し掛かって、ちょっとした事件が起きた。

きっかけは初恋ちゃんのイケメン好きを店長がバカにしたことだ。

「変わってんな、お前。アイドルとか二次元にキャーキャー言ってるヤツと何が違うんだ?」

店長が眉を潜めながら言ったその言葉に初花ちゃんは、好きな人も気になる人もいない。イケメンが心の恋人だから、毎日満たされてます!ときっぱりと言い切った。

……嘘っぽい。

確かにお客さんでかっこいい人がいたりすると、浮かれたようにキャーキャー言ってるけど……満たされてるようには見えない。心の恋人って言って特定の人を作らないで、逆に恋を避けているようにも見える。


ムクムクと初花ちゃんの恋心に疑問が沸いて来た私の思考を、店長の呆れたような一言が遮った。


「何だよ。結局一人で興奮して、消化してるだけだろ?ばかばかしい。一人でヤッてんのと変わんねぇだろ」


あー、そう言う捉え方もあるのね。

固まってしまったみんなを横目に、私は妙にその表現に納得をしてしまった。

しかし……主催者側のくせに、盛り上げる気が全くないのね。

ふくれっ面をした初花ちゃんを今日の主役のはずの鞠枝さんがどうどう、と言った感じでなだめている。

冷めていく空気を気にすることもなく、ちらりと時計に目をやると店長は席を立って行った。
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