ベビーフェイスと甘い嘘

残された私達。

初花ちゃんは相変わらずふくれたままだ。

そしてちらりと自分のグラスに目をやると……ニヤリと笑った。

それからの彼女の行動は素早かった。

ワイングラスを飲み干して空け、そこに店長のグラスの中身をザバッと雑に移して、そのままそばにキープしていたウーロンハイを注ぐ。


子どもみたいなイタズラに思わず「ちょっと、初花ちゃん」と軽くたしなめてみたけど、「ちょっとしたイタズラですよ」とニヤニヤ笑う初花ちゃんが面白かったので、放っておくことにした。

イタズラの準備万端整った絶妙なタイミングで、店長が戻って来た。

鞠枝さんは呆れた表情で、唯ちゃんはニヤニヤとしている。初花ちゃんが唯ちゃんに『笑うなよ』という視線を送っていた。

そのまま店長はグラスに口を付けて、イタズラ成功となるはずだったけど……

ウーロンハイを二口ほど飲んだ店長は、顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏すように倒れこんでしまった。

唖然とする初花ちゃん。そんな初花ちゃんに首まで真っ赤に染めた店長は、「お前、後で絶対、コロス」と呪いのように呟いた。


……あーあ、ダメだ。親睦を深めるどころか、溝が深まったみたい。
< 119 / 620 >

この作品をシェア

pagetop