ベビーフェイスと甘い嘘
そして「嬉しいなー」と猫のように肩にすり寄って甘えて来ようとしたから、「やめてよ」と冷たく言いながらバシッと頭を叩いてやった。
かなり力を入れて本気で叩いたのに全然堪えてない。「照れちゃってー」なんて言いながらまた近寄って来たので、とっさにカウンターの中に逃げてしゃがみこんだ。
「直喜、お前酔いすぎ。ねーさん迷惑がってんの分かってないの?」
呆れながら注意する九嶋くんの言葉も耳に入らないのか、さらにカウンターの中をのぞきこむように話しかけてくる。
「ねぇねぇ茜さん、俺の短冊見た?智晶さん教えてくれた?」
「あー、うぜぇ。お前の事なんて一言も話して無いっつの」
ニコニコと話かける直喜の言葉を顔をしかめながら『うぜぇ』とバッサリ切った所で、レジにお客さんがやって来た。
九嶋くんはまだ何か言い足りなかったみたいだったけど、しぶしぶレジの方へと戻って行った。
はぁ……と溜息を一つついて私は立ち上がった。
私だってめんどくさいと思ってるけど、このまま放っておくともっとめんどくさい事になるはずだ。
明らかに営業妨害だし……明日、日勤の時間帯まで働いてくれる九嶋くんに、これ以上迷惑をかける訳にもいかなかった。