ベビーフェイスと甘い嘘
生成り地に赤と薄桃の牡丹が散りばめられた浴衣は、茎や葉の部分が藍色で描かれていて、メリハリがきいている。
芥子色に近い黄色の帯も生成りと色味が合っていて、全体的に上品で落ち着いた感じに仕上がっていた。
化粧も浴衣に合わせてくれたのか、少しだけ大人びた雰囲気で、思わず「……素敵」と口にしてしまった。
「気に入ったでしょ?」
どうだ、と言わんばかりの表情で九嶋くんが笑いかける。
「うん。気に入った。……でも、これほんとに借りちゃっていいの?」
「いいよ。俺が着せたかったんだから。想像以上に似合ってた。すげー、満足」
満足してくれたのはいいけど、ますます九嶋くんのメリットが感じられないのだけど……
他人(ヒト)を着せるだけ着せといて、彼はTシャツにカーゴパンツというごくごく普通の格好をしている。
「俺も浴衣着ちゃったら芽依さんが仲間外れになっちゃうでしょ?」
お腹が大きい芽依は浴衣を着られない。浮かないように合わせてくれた、ってことらしい。
「残念。九嶋くんとお揃いで浴衣着たかったのにな」
だってドレスがあんなに似合うんだもの、浴衣だって私よりきっと色気が出るはずだ。
「もちろん、女性用のほうね」
芽依に聞こえないくらいの声でこっそりと言ったら、「却下」と返されて、頭を軽くコツンと叩かれてしまった。