ベビーフェイスと甘い嘘

その悲しげな表情を目にした途端に我に返ったのか、九嶋くんはハッとした顔になり、そして私の方を見た。

たぶん……私はひどく戸惑った顔をしていたに違いない。


「ごめんね。せっかく友達に会ったのに俺が雰囲気壊しちゃって。……今日は付き合ってくれてありがと。俺ヤスさんとこ行くから気を付けて帰って。……翔もごめんな」


九嶋くんはそれだけ早口で言うと、翔の頭をポンポンと撫でて、そのまますぐに人混みの中へと消えてしまった。

その表情はよく見えなかったけど、何だか泣き出しそうな顔をしているように見えた。


「ママー、ちあきちゃんかえっちゃったの?」


「うん……そうみたい」


「えー!ひどい!いっしょにヨーヨーつりやろうっていったのに!」


「ごめんなさい。私が智晶ちゃんに話しかけたから……」


さっきまでニコニコと話をしていた奈緒美ちゃんまで、泣き出しそうな顔をしていた。たぶんずっと泣きたいのを我慢していたんだろう。


裕子姉さんも千鶴ちゃんも黙ったままだ。


さっきまで自分たちには愛想良く話をしていた九嶋くんが人が変わったように冷たくなったのを見て、驚いてしまったようだった。
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