ベビーフェイスと甘い嘘
もうしちゃったことを、されないように気を付けろだなんて、今更だし変な感じ。
だったら、こんな自由な人を式場で野放しにしないで欲しかった。
……今だって、たぶん私一人だけが気まずい気持ちでいるに違いないんだから。
「ママ……だっこ」
手を繋いでいた翔が膝にしがみついてきた。
その目はトロン、としていて『もう限界です』と言っていた。
あー、やっぱり眠くなっちゃった。このまましばらく抱っこしてたら絶対に寝ちゃうだろうな。
……そしたら、そのまま家に帰っちゃえばいいや。
「カケル、おいでよ」
明日目を覚ました翔に何て言い訳しようかな、なんて考えている隙に直喜がひょい、と翔を抱き上げてしまった。
「……やだ。ママがいい」
眠くて目蓋を閉じる寸前だったけど、翔は足をばたつかせて嫌がった。
「直喜、いいよ」
手を広げて変わるよ、と言ったけど、直喜は翔を抱っこしたまま代わろうとしない。
そして「なぁ、カケル。ママ足が痛いんだって。ママの足が治るまで、ナオキが抱っこしててもいいかなぁ?」と言った。
「えっ……」
どうして分かったの?
さっきから履き慣れていない下駄の鼻緒が足に食い込んで、右足が痛くなっていた。
でも、ちょっと痛むくらいだから家までは平気だって思ってたのに。