ベビーフェイスと甘い嘘

もうしちゃったことを、されないように気を付けろだなんて、今更だし変な感じ。


だったら、こんな自由な人を式場で野放しにしないで欲しかった。


……今だって、たぶん私一人だけが気まずい気持ちでいるに違いないんだから。



「ママ……だっこ」

手を繋いでいた翔が膝にしがみついてきた。

その目はトロン、としていて『もう限界です』と言っていた。

あー、やっぱり眠くなっちゃった。このまましばらく抱っこしてたら絶対に寝ちゃうだろうな。

……そしたら、そのまま家に帰っちゃえばいいや。


「カケル、おいでよ」

明日目を覚ました翔に何て言い訳しようかな、なんて考えている隙に直喜がひょい、と翔を抱き上げてしまった。


「……やだ。ママがいい」

眠くて目蓋を閉じる寸前だったけど、翔は足をばたつかせて嫌がった。

「直喜、いいよ」

手を広げて変わるよ、と言ったけど、直喜は翔を抱っこしたまま代わろうとしない。

そして「なぁ、カケル。ママ足が痛いんだって。ママの足が治るまで、ナオキが抱っこしててもいいかなぁ?」と言った。

「えっ……」

どうして分かったの?

さっきから履き慣れていない下駄の鼻緒が足に食い込んで、右足が痛くなっていた。

でも、ちょっと痛むくらいだから家までは平気だって思ってたのに。

< 207 / 620 >

この作品をシェア

pagetop