ベビーフェイスと甘い嘘

私の言葉にヤスさんはそっか、とうなずきながら笑顔になった。

「アカネさん。智晶と仲良くしてくれてありがとう。あいつ、最近明るくなったんです。何があったんだろうって思ってたけど……そっか、あなたが店に来てくれた頃から変わったんだ」


「でも、私何もしてませんよ?」


「それでいいんです。あいつの回りは余計な事をしようとするヤツばっかりだから……あなたは今まで通り、普通に接してやってください」


さっきまで動揺していたことが嘘みたいに、ヤスさんは穏やかで落ち着いた表情に戻っていた。


……ヤスさんの中のいろんな誤解が解けたからだと、信じたい。


私にはヤスさんが言った言葉の意味は、あまり理解できなかった。

宇佐美兄弟と九嶋くんの兄弟と奈緒美ちゃん、そしてヤスさんの間には何か複雑な事情があるみたいで、易々と他人に話せることじゃないという事だけは分かった。


……だったら無理に聞かなくてもいい。


九嶋くんにとって、何も知らない私の存在が大切だと思ってくれているのなら、今はそれでいい。


私はヤスさんに向かって笑顔で「はい」と応えた。
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