ベビーフェイスと甘い嘘
「高いところにある本を戻す時だって、誰にも声をかけないで一生懸命背伸びして頑張っててさ。お腹が大きいのに、ずいぶん危なっかしいことしてるなって……はらはらして、いつも気になってた」
「直喜、その話って……」
確か同じような話を、鞠枝さんの送別会の日の夜に聞いたはずだ。その時はてっきり、コンビニでの私の話だと思っていたけど……
「それって私のこと……だよね。直喜は私のこと、前から知ってたの?」
そんな私の疑問もまるで聞こえていないかのように、直喜は話を続けた。
「その人は、いつも愛しそうにお腹を撫でていて、そんな姿が凄くしあわせそうに見えた。……ほんとうに好きな人と結婚したんだなって、そう思って羨ましかったんだ」
高いところに背伸びをしていたのは、コンビニの商品を取る私じゃなくて、書棚に本を戻していた私だったんだ……
確かに、私はあの時は、しあわせだった。修吾と夫婦になって、間もなく生まれてくる子どもと家族になる。
そんな未来を想像しただけで嬉しかった。