ベビーフェイスと甘い嘘
アーケードの中に入り、どんどん進んでいく。
体温の低い直喜の手に触れていると、繋いでいる自分の手が熱を持ったように熱く感じる。
ほとんどの店が営業を終えている商店街は、シャッターが閉まって閑散としていた。
いつもだと夜は人通りが少ないこの道も、花火帰りの浴衣を着たカップルや親子連れがちらほらと見えた。
そのうち『ウサミ』の方へと曲がる小路が見えて来たけど、直喜は曲がることなく真っ直ぐ進んだ。
やがてアーケードの入り口と、一際明るく輝く『サンキューマート』の看板が見えてきた。
コンビニの入り口の横にある喫煙スペースで、直喜は足を止めた。
「ちょっと待ってて」
そう言うと、直喜はそのまま店の中へと入って行ってしまった。
「ちょ、ちょっと……」
止めたかったけど、店内には夕勤の子達と……今の時間は、たぶん店長がいるはずだ。
残された私は、店のみんなに見つからないように小さく縮こまるしかなかった。
「お待たせ……って、あれ?何小さくなってるの?」
「……こんなとこ見つかったらマズイに決まってるじゃない」
「ははっ。茜さん、あの格好いい店長さんと仲悪そうだもんね」
「分かってるなら、さっさと行こうよ……」
「大丈夫だって。ここは店の中からならそんなに見えないから。……まぁ、店の外だとどっちみち目立っちゃうかな」