ベビーフェイスと甘い嘘
このままさっさと帰ってしまいたい。だけど直喜は翔を抱っこしている。これじゃ……まるで人質じゃないの。
「ほら、行こう」
直喜はもう手を取らなかった。
店の近くだから気を遣ってくれたのかもしれない。
店のみんなに見つからないように、顔を店とは反対の方向に向けて、直喜の身体に身を隠すように並んで歩いた。
動揺しているし、恥ずかしいし、とても気まずい。
いろんな気持ちが複雑に絡み合って、もうどうしていいのか分からない。
「茜さん」
「なっ……何っ?!」
突然かけられた声に身体がビクリと震えて、声が裏返ってしまった。
「あぁ……失敗した。余計なこと言わなきゃ良かったな。お願いだから、そんなに恐がんないで」
「無理。恐いよ。だって……直喜のことがますます分かんなくなったんだから」
正直に動揺していることを告げた。
そう言わないと納得のいく答えを聞けないような気がした。この人は……私のことをどう思っているの?
直喜の気持ちを、どうしても知りたかった。