ベビーフェイスと甘い嘘

アーケードを抜け、スーパーを通りすぎ、直喜と以前待ち合わせたコンビニも通り過ぎた。

もうしばらく道なりに進むと道を挟んで小さな公園が見えて来る。その公園の裏手に、私の住むマンションがあった。


公園が見えた所で「ここまででいいよ」と言うつもりだったけど、「あ。ちょうどいいね。ここ。ほら、茜さん座って」と直喜に先を越されて、公園のベンチに座らされてしまった。


「座ったままカケルのこと抱っこできる?」

うなずくと、ようやく私の腕の中に翔が戻って来た。


「……これ、脱がすからね」


そう言いながら直喜は私の足元に跪いた。

「何を?」と思う間もなく、右の足首の辺りにひやりとした柔らかなものが触れて、下駄の鼻緒の感触が無くなった。下駄を脱がすために直喜が私の足首を持ち上げたのだと分かった。

その手はとても優しかったけれど、そっと触れられた感触に思わず身体がゾクッと震えた。


下駄が脱がされ、少し温い夜の風が足の裏をすっと撫でていくのを感じていると、そのまま足をすとんと直喜の膝の上に乗せられてしまった。


「あぁ……やっぱり赤くなってる」

「痛そうだな」と言いながら、直喜は袂から絆創膏を取り出した。


「それって……」

「うん。さっきコンビニで買った」

テープ止めの部分を剥がし、傷口にそっと貼りつける。

「……つぅっ」

突き刺すような痛みに、思わず声をあげてしまっていた。
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