ベビーフェイスと甘い嘘

「痛かった?ごめんね。……でもさ、痛いのを正直に言わないで我慢して、ずっと耐えてきたからこんなに赤く擦れちゃったんだよ。……だからさ、傷口に気がつかないふりをしたって痛みは強くなるだけなんだよね」


こんな足の傷くらいでずいぶん大袈裟な……と思っていると、「ねぇ、茜さん。……どうしてあの時あんなに泣いていたの?」と直喜はいきなり聞いてきた。


「それ、確か前も私に聞いたよね?」


『pastel』で会った時、直喜は同じ質問を私にしたはずだ。

あの時はどうして泣いたのか分からないと彼に言っていたはずだ。そして、その答えは今でも出ていない。


それに、足の痛みと涙の話は何の関係もない。


「うん、聞いたよ。だけどあの時は結婚式の夜の話を聞いたでしょ?でも今はね、5年前のことを聞いてるんだよ。……今の茜さんなら答えられるんじゃないかな」



確かに、今の私なら5年前のあの日の気持ちは説明ができるのかもしれないけど。



でもどうして?……何でこの人はこんなにも私を見透かすように、あっさりと私の心に近づくことができるんだろう。
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