ベビーフェイスと甘い嘘

正月には実家に帰らなかったから、母に会うのは去年のお盆以来だ。


「今年は、修吾さんの実家には行かないの?」


電話も滅多にしないので、母の声すらずいぶん久しぶりに聞いたような気がする。


「うん。私はどうしても仕事が休めないから、二人だけで行ってもらった。お母さん今日は?芽依の所に泊まるの?」


「ううん。芽依が身重だから拓実さんの所にも、家にも来ないって言ってたから、様子を見に来ただけよ。亜依の顔も見たかったけど、帰りは遅くなるって言ってるし……また今度にするわね」


最後の言葉は芽依に向けて話しかけていた。


亜依の顔が見たかった、か。

……あなたの孫は亜依だけじゃないのに。


彼女の言うまた今度とは、芽依が出産する時なのだろう。


「それじゃ、母さんそろそろ帰るわ。……茜、あなた少し太ったんじゃない?ちゃんとしないとダメよ。太ってるとね、妊娠した時色々と大変なんだから」


……まただ。


物心がついた頃から言われ続けてきた『ちゃんとしなさい』と言う言葉。


長女ということもあっただろうけど、どんなに努力しても褒められた事なんて一度も無かった。


私は幾つになったら、母の思うようなちゃんとした人間になれるのだろうか。
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