ベビーフェイスと甘い嘘

『ちゃんとしなさい』『こうしなさい』。
子どもの頃は母のこの言葉に従って生きてきた。

そして今は修吾に『こうすればいいだろ』と言われて、反対する事もなく言うことを聞いてきた。


地元を離れた時は、母の束縛から自由になれた気すらしたのに……


私は今も変わらず、こうしなさいと言われたことに従っているだけだ。


自分からは何をすることもなく、何も考えずにただ生きている。



玄関まで母を見送り、車が出たのを確認すると同時に、何とも言えない疲労感が身体を駆け巡った。



「茜ちゃん、疲れすぎ。……気持ちは分かるけど、節目節目で会っておかないともっと面倒なことになるよ。お母さん、基本的には心配性なんだから」


「分かってるよ。……あーあ。お母さん、やっぱりまた子どもの話したね」


ここ数年、実家に顔を出すと決まって「二人目はまだなの?」と聞かれていた。


身内だからこその遠慮の無い口調が嫌だった。


柏谷の家にどうしても行きたくなかったのだって、修吾と灯さんが一緒にいるところを見たくなかったってこともあったけど……


ほんとは義母に子どもができたのかどうかを聞かれたく無かったのが、いちばん大きな理由だった。
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