ベビーフェイスと甘い嘘

……この人は何を言ってるの?


愛してるのに……やましいことはないの?


違うでしょう。


身体で繋がっていても、繋がっていなくても……


ずっと心の底で想い続けているほうが、よっぽど達が悪いでしょう?


結婚までして……散々身体を重ねてきたのに、心の中では愛されていなかったなんて……


こんな残酷なことってないじゃない。




ーー修吾は抵抗する私の腕を強く掴んで、何度も何度もフローリングに押し付けた。


乱暴に服を脱がされて、引きちぎられるような痛みに顔を歪めると、修吾は口元を歪めながら満足そうに笑った。


もうこの人とは触れあうことも無い……そう思っていたのに。


修吾への愛は無くなっても、夫婦としての情だけは僅かに残っていた。


それすらも……この瞬間に粉々に砕け散って消えていってしまったような気がした。



***


ところどころ記憶が曖昧で、身体中に痛みを感じる。


どれぐらい時間が経ったのか…………気がついたらリビングに一人残されていた。


自分がどんな形をしていたのかも分からなくなるくらい滅茶苦茶に抱かれたのに、涙は一滴も出なかった。



…………そっか。


修吾の前では……私は涙を流せなかったんだ。



たったそれだけの事なのに、心だけは守り通せたような気がして、思わず乾いた笑みが溢れた。


< 269 / 620 >

この作品をシェア

pagetop