ベビーフェイスと甘い嘘
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「茜さん、おはようございます。……あれっ?また眼鏡だ。珍しいですね」
お盆明けの17日。出勤前のスタッフルームで唯ちゃんに声をかけられた。
左頬の腫れは引いたけど、まだ若干青黒さが取れていない。慌ててコンシーラーと眼鏡で誤魔化したから、あんまり見られると困っちゃうんだけど……
「茂木、悪いけどちょっと先に店に入ってくれる?」
覗きこむように私の目元を見ようとしていた唯ちゃんに、夜勤上がりの九嶋くんが声をかけた。
「えー。まだ10分あるじゃないですかー」
「ちょっとねーさんに話があるんだよ。コーヒー奢ってやるから、代わりに10分働いてくれよ。頼む」
「えー、10分もー?!……じゃあ150円じゃないですか!チロールチョコも付けてくださいっ!限定のヤツで!!」
100円コーヒーじゃ割りに合わない!と50円のチョコまできっちりと要求して、唯ちゃんは店舗へと向かって行った。
「茂木って、遠慮の無いヤツだよな。黙ってたら結構美人なのに。ほんと、勿体ない」
苦笑いする九嶋くんに私も同じ笑いを返した。
私だって、この前早退した時に(私が悪いんだけど)散々遠慮のない言い方で怒られたばっかりだ。